従来の蛍光色の測色計(測定機器コラム)
3. 従来の分光測色計の測定原理
分光測色計には様々な種類があるものの、共通する主な目的としては、物質のスペクトル特性に基づいてその性質を評価することです。これは、試料に光を照射し、その光が試料と相互作用した後の光の強度を測定することで実現されます。
分光測色計で蛍光試料を測定する際、試料を照射する光源は重要な役割を果たします。
現在一般的に使用されている光源は、タングステンハロゲンランプ、キセノンフラッシュランプ、LEDの3種類です。
多色光源を使用する場合、光のスペクトルは波長毎に均等に分離させる必要があり、これは通常、回折格子を用いたモノクロメーターによって行われます。
回折格子とは、非常に狭い平行線を持つガラスまたは金属板で、光の回折と干渉によってスペクトルを生成するもので、その分光されたスペクトルは、光検出器などのセンサーによって波長ごとに測定され、入射した光子を電気信号に変換することで光を検出します。
その結果、各波長範囲における放出強度または放出率を得ることが出来ます。

試料には通常、400〜700 nmの可視光領域で照射されます。
光源にUV成分を含む高性能な分光測色計では、UVカットフィルターにより照明エネルギーを可視光のみに制限でき、一方、UV成分を含まない分光測色計では、追加のUV光源(UV LED等)を用いる事があります。
UV成分あり・なしの測定結果を比較することで、材料に蛍光体が含まれているかどうかを判断することができますが、この比較により定量的に評価できるのは、UV領域で励起される蛍光体のみに限られます。
4. 従来の分光測色計の限界
4.1 反射特性と蛍光発光の区別の欠如
物体の色は、光が表面に当たって再放出される反射特性によって決まります。
非蛍光性の物質であれば、吸収された光はすぐ同じ波長の光として戻ってくるため、分光測色計はその反射光を測定し、対象物固有の反射スペクトル曲線を得る事が出来ます。
しかし、材料に蛍光体が含まれている場合、蛍光物質は吸収した光とは異なる波長の光を放出する蛍光発光を引き起こすため、従来の分光測色計では、非蛍光成分の反射特性と蛍光成分の放出を区別することができません。
その結果、本来の反射スペクトルと蛍光による発光スペクトルが混ざったものとなり、品質管理上の問題を引き起こすことがあります。

4.2 光源への依存性
以下のグラフは、キセノンフラッシュランプとタングステンハロゲンランプの分光分布の例を示しています。

タングステンハロゲンランプは可視光外の紫外線領域でほとんど光子を放出しませんが、キセノンフラッシュランプはこの領域で多くのエネルギーを持っています。
また、2つの光源は可視光スペクトルの短波長領域である青色域においても異なります。
キセノンフラッシュランプは、タングステンハロゲンランプよりも試料表面にかなり多くのエネルギーを照射します。材料に含まれる蛍光体の特性によって、励起や放出量も異なります。これにより、同じ蛍光試料であっても、異なる分光測色計で測定した反射スペクトルは、使用される光源によって明確に異なることが分かります。
したがって、従来の分光測色計では、機器で使用される照明条件に左右されずに蛍光材料の反射スペクトルと発光スペクトルの組み合わせを評価することはできません。
まず、異なる光源を備えた2種類の分光測色計で測定した蛍光増白剤のスペクトル曲線の例を示します。
キセノンフラッシュランプの紫外線成分は、タングステンハロゲンランプよりも蛍光増白剤をはるかに強く励起し、その結果、青色波長領域でかなり多くのエネルギーを放出することが明確に示されています。
タングステンハロゲンランプで測定された最大反射率は約95%(オレンジの線)に対して、キセノンフラッシュランプで測定した値(グレイの線)は、反射と放出を合わせて約120%に達します。

したがって、異なる分光測色計で得られた蛍光試料のCIELab測定結果は比較できません。
以下の表は、わずかに蛍光性をもつ2つのコイルコーティング試料に対するCIELab測定結果を示したものです。ごくわずかな蛍光性であっても、大きな差が生じることがわかります。
例えば、キセノンフラッシュランプを用いた分光光度計で得られた結果では、品質検査で「合格」と判断される一方で、タングステンハロゲンランプを用いた機器では同じ試料で「不合格」と判断されます。

5. 蛍光材料の検査方法
5.1 UV成分のあり/なしでの測定
工業的な品質管理にて、蛍光性をもつ試料を評価するための適切な測定技術は不足していたため、これまで一般的に行われてきた方法として、試料に対してUV成分あり/なしの2種類の測定を実施することでした。
この2つの測定で得られたCIELab値が異なる場合、その材料にはUV領域で励起される蛍光体が含まれていると推測できます。
しかし、この方法には明らかな欠点があります。第一に、これは実際の測定値ではなく相対的な判断に過ぎない事。第二に、評価出来るのはUV領域で励起される蛍光体のみであり、可視光領域で励起される多くの蛍光体については、この分析方法ではまったく考慮されていない事です。
5.2 蛍光分光法(蛍光光度計)
科学分野では、蛍光光度計を用いて蛍光体を励起させ、その放出される蛍光を測定します。
蛍光分光法は、分子がもつ蛍光特性に基づいてその蛍光を分析する手法です。
蛍光光度計には、照明光源(できれば深紫外線域(約200nm)までカバーする広いスペクトルをもつキセノンランプ)を用いて光が導入され、光はモノクロメーターを通過して特定の波長が取り出された後、分析対象の試料に照射されます。
試料は発光スペクトルを放出し、それが下段の分光計によって記録されます。
蛍光試料を測定するためには、このプロセスを360 nm~700 nmまで1nm刻みで順に繰り返します。求めるシグナル品質と分解能により異なりますが、一回の測定には約1秒かかるため、360〜700 nmの全波長範囲の評価には最大で2時間ほどかかることがあります。その結果、340個の発光スペクトルが得られます。

よく用いられるグラフ評価手法として、励起-発光マトリクス(EEM)があります。EEMとは、励起波長、発光波長、蛍光強度をプロットした等高線図を生成する3Dスキャンです。EEMはさまざまな用途で利用され、多くの種類の蛍光体試料に対して「分子の指紋」と呼ばれています。蛍光分光法は、研究・科学分野で幅広く利用されており、例えば生物医学分野では、タンパク質、核酸、生細胞の解析に用いられています。一方、産業分野、特に品質管理における用途では、主に製薬業界および食品技術分野に限定されます。
これは、蛍光光度計の導入コストが分光測色計に比べて大幅に高く、さらに測定時間も指数関数的に長くなるためです。
次のコラムでは、分光測色計と蛍光光度計を兼ね備えたBYK-Gardner社製spectro2guideおよびcolor2viewについて、詳しく紹介いたします。

