分光測色計と蛍光光度計を兼ね備えた新しい測色計(測定機器コラム)
6. 分光測色計と世界最小の蛍光光度計を一体化
前述のコラムで述べたように、蛍光性材料を異なる分光測色計で測定した結果は、測定機器の物理的構造や内部光源、さらには蛍光体の特定の励起特性によって、比較出来る範囲は限定的か、全く比較できない場合があります。
しかし、蛍光光度計を用いた蛍光材料の品質管理は、分析時間が長くコストも高いため、産業分野での実施はほとんど不可能です。
では、蛍光材料の産業分野での品質管理はどのように実現できるのでしょうか。
6.1 色と蛍光の計測に求められる要件
弊社取り扱いのBYK-Gardner社は、あらゆる照明条件下で目視と一致するまったく新しい革新的な手法を用いて、プラスチック、塗料、紙、繊維などの蛍光材料について、産業分野での品質管理を可能にすることを目標としております。
そのために、分光測色計と小型化された蛍光光度計を、携帯可能なハンディタイプの測定器として統合する事を目指しました。
個々の測定にかかる時間は、非蛍光性の色測定に比べてわずかに長くなる程度に抑える必要があり、購入コストも従来の分光測色計と同程度に抑える必要があります。
この目標は2つの製品群によって実現されました。
「spectro2guide」は、ハンディタイプの分光測色計で、環状照明タイプ(45°/0°)および積分球タイプ(d:8°)の測定ジオメトリを備えたモデルがあります。
「color2view」は、環状照明タイプ(45°/0°)の測定ジオメトリを備えた卓上型分光測色計です。
6.2 物理的構造と測定原理
BYK-Gardner社では、過去30年間にわたり、すべての測定機器にLED光源を使用することが標準となっています。
これは、LEDが短期的・長期的に優れた安定性および温度安定性を持ち、それによって卓越した再現性と機差を実現できるためです。 分光測色に必要な多色光を提供するために、2つの新しい製品群では、自然光のスペクトルを可能な限り正確に再現するために特別に開発された、3種類の蛍光体を用いた「フルスペクトルLED」を採用しています。

蛍光を評価するために、蛍光光度計の測定原理を簡略化した形で採用しています。spectro2guideでは12個の単色LED(360~660 nm)が、color2viewでは18個の単色LED(300~700 nm)が、それぞれ狭帯域干渉フィルターを備えた光源として使用され、試料表面を順番に照射します。
単色LEDによる個々の測定について、励起光の分光反射分布が計算され、測定された蛍光発光の分光放射分布に関連付けて設定されます。

従来の分光測色計とは異なり、蛍光体を含む試料からは単一の分光曲線だけでなく、最大19本の分光曲線が検出されます。
その内1本は多色光で照射されたものであり、残りの18本は単色光で照射されたものです。
以下の2つのグラフは、例として、最初の5つの単色LEDの励起スペクトル(図1)と、試料RAL1026「ルミナスイエロー」の同じ波長での再放出および低エネルギー・長波長域での蛍光発光(図2)を示しています。
例えば、LED 02(黄色)の励起最大値は415 nmにあり、これは可視光域に属します。
しかし、元の励起エネルギーのほんの一部しか同じ波長で再放出されず、エネルギーの大部分は530nmをピークにもつ490〜650 nmの範囲で放出されます。

(図1)

(図2)
分光測色計と蛍光光度計を組み合わせることで、「spectro2guide」と「color2view」の2つの製品群は、反射と蛍光発光を区別して測定することができます。
これが、いわゆる「ゼロカーブ」の内部計算の基礎となります。
ゼロカーブとは、励起波長から放出波長へのシフトがない状態での測定対象物質のスペクトルに対応しており、これにより、装置に搭載された光源の分光放射分布に依存することなく、蛍光材料を評価することが可能になります。
さらに、「ゼロカーブ」により、蛍光試料に対して選択した標準光源に応じた正確なL*a*b*値を初めて算出できるようになりました。
この目的のために、既知の励起波長を選択した標準光源と関連付け、各単色LEDの重み付けされた発光スペクトルを用いて、反射スペクトルを補正します。これにより、目視との非常に高い一致性が保証されます。

7. 蛍光データ解析-長期的な色安定性の予測
7.1 蛍光スライダー
両製品群に付属するソフトウェアでは、材料に含まれる蛍光体の特性を詳細にグラフで解析することができます。
スライダーを使用して任意の単色LED(励起波長)を選択すると、対応する発光スペクトルが即座に表示されます。
下のグラフで励起波長570 nmの試料(右)と標準品(左)を比較すると、発光スペクトルが大きく異なることがわかります。標準品の蛍光体の発光スペクトルは620 nmと670 nmで2つの明確なピークを示しているのに対し、試料の蛍光体は590〜760 nmの全波長域においてほとんど光を放出していません。したがって、標準品と試料の材料組成は、使用されている蛍光体に関して異なり、ひいては光学的な印象、さらには長期的な安定性の面でも異なることが明確に示されています。

スライダーを使用した分析オプションは、以下のようにまとめられます。
・蛍光体を含まない材料は、光が放出されないためゼロラインとして表示されます。
・同じ蛍光体を含む材料は、発光特性が同一であるため、同一の発光スペクトルを示します。しかし、添加された蛍光体の量によっては、発光スペクトルの強度は異なる場合があります。
・発光スペクトルの形状が異なる場合、異なる蛍光体が使用されたと推測できます。
7.2 特殊指標 dE Fl と dE zero
簡易的な評価を可能にするため、蛍光エネルギーを定量化する2つの新しい指標dE FLとdE zeroが開発されました。
■dE Fl
dE Flは、材料に含まれるすべての蛍光体が劣化して消失したと仮定した場合に、視覚的な色の見え方がどれだけ変化するかを示す指標です。
つまり、これは従来の「試料と標準」の比較ではなく、試料の「現状」と「将来予測される劣化後の状態」を比較する指標です。
例えば、蛍光増白剤が添加された白い紙と、日光にさらされた直後に黄ばんだ紙とを比較するようなものです。
■dE zero
dE zeroは、標準品と試料の両方に含まれるすべての蛍光体が劣化して消失したと仮定した場合の将来の色差を示す指標です。
例えば、家の正面に設置された複数の白いプラスチック窓を想像してください。顧客にとって重要なのは、窓が設置時に同じ白さを示していることだけでなく、時間の経過とともに均一に変化することも重要です。もし、ある窓に使用された蛍光体の量が少なかったり種類が異なったりしたために、他の窓よりも黄ばんでしまった場合、将来の色の調和は低下します。図15の白色コイルコーティングの例は、dE zero(将来の色差)がdE(現在の色差)よりも著しく高いことを示しています。

dE FlおよびdE zero指数の計算は、いずれも顧客が使用している色差計算式に基づいています。例えば、単色の品質管理にΔEcmcまたはΔE2000を使用している場合、dE FlおよびdE zeroの結果は同じ計算式に基づきます。
したがって、両方の指数の結果は視覚的な色の印象と一致します。つまり、値が高いほど、すべての蛍光体が劣化した後に予測される色差が大きくなります。
標準的な色差と同様に、標準管理においてdE FlとdE zeroに対して許容値を設定する事がも可能です。
これら2つの新しい指数は、ソフトウェア上に表示されるだけでなく、装置のディスプレイにも表示されます。追加の視覚的表示として、蛍光が検出された場合は機器のステータスLEDが青色に点滅し、蛍光の定義された限度値を超えた場合はピンク色に点滅します。
8. 一般的な蛍光光度計との結果比較
以下では、堀場製作所のラボ用蛍光光度計と「color2view」との蛍光測定の結果を比較します。比較のために、白色コイルコーティングで作成された代表的な試料(標準品/試料)を測定しました。
この試料が選ばれた理由は、標準品と試料で異なる蛍光体が使用されていること、また標準品に使用されている蛍光体が非常に特異的な特性を持っているため選ばれました。
比較の信頼性を高めるため、両機器の測定結果は励起・放出マトリックス(EEM)として表示されます。
標準品に含まれる蛍光体は、堀場製作所品の測定結果のグラフ評価では、620、640、670 nmの波長で非常に急勾配と5つの個別の発光ピークを示しています(図3)。
急勾配や複数のピークは、検出のために励起と放出に対して非常に精細なスキャングリッドを必要とするため、あらゆる測定システムにとって特に困難な課題となります。
color2viewの測定結果から得られたグラフ(図4)を比較すると、非常に高い一致度が確認できます。color2viewに搭載された小型蛍光光度計も、対応する波長の5つの個別の発光ピークを特定することが可能です。

(図3)

(図4)
これら2つの評価結果における最も顕著な違いは、640 nmでの発光ピークの高さです。
堀場製作所の蛍光光度計による評価では、5つのピークのうち1つが他の4つよりも明らかに際立っているのに対して、color2viewで測定された発光ピークは、その両隣の2つのピークとほぼ同じ高さになっています。この理由もまた、先端が尖ったピークの勾配が非常に急であることにあります。最終的な発光最大値を表示するためには、検出が要求される波長で正確に行われる必要があります。堀場製作所のラボ用蛍光光度計は、color2viewの小型蛍光光度計よりも細かいグリッドで検出を行うため、発光最大値の波長をより正確に捉えることができます。
この発光ピーク特性の偏差は、dEFlおよびdE zero指数の計算においては無視できる程度であり、どちらも曲線下の面積(積分値)に基づいて計算されます。したがって、データ解析用ソフトウェアsmart-labは、発光を3Dモデル(EEM)として表示せず、選択した励起波長に応じた発光曲線として表示します。蛍光スライダーの詳細については第7.1章を参照してください。

図3(堀場製作所品)や図4(color2view)の標準品と試料を比較すると、どちらの図でも標準品の方が試料よりも明らかに多くの光を放出していることがわかります。このことから、蛍光が減衰した後、標準品は試料よりも視覚的に大きな変化を示すと結論づけられます。
この仮定は、新たに開発された蛍光指数によって確認できます。標準品について算出されたdE zero値0.67は、dEzero値0.3の試料と比較してほぼ2倍の値です。標準品と試料の現在の色差(dE94 = 0.83)を、蛍光が完全に減衰した後の将来的な色差予測値(dE94 zero = 1.66)と比較すると、ここでも明らかな劣化が生じることがわかります。

9. まとめ
新世代の測定機器である「spectro2guide」(左)と「color2view」(右)は、従来の分光測色計と蛍光光度計を組み合わせることで、品質管理に革新をもとらしています。
一方で、これらの機器は、1回の測定で、材料に蛍光体が使用されているかどうか(意図せず使用されている場合も含む)を明らかにし、それによって従来の分光光度計間で生じる測定値のばらつきを説明することができます。
他方、この新世代の測定機器は、産業規模で初めて、手頃な価格でありながら高精度な蛍光光度計を提供いたします。
これにより、装置に搭載された光源に依存することなく蛍光材料の品質管理が可能となり、比較可能なCIELab測定値を提供します。
最後に、新しいdE FlおよびdE zero指数は、蛍光試料が太陽光にさらされた際に、どの程度変化する可能性があるか、またはすべての蛍光成分が減衰した後、2つの試料間の将来の色差がどのように変化するかを予測します。


