蛍光色の色測定(測定機器コラム)
1. はじめに
私たちの身の周りの世界は明るく色彩にあふれています。特にネオンカラーはここ数年再びトレンドとして注目されています。その前提となっているのは、塗料、プラスチック、その他多くの産業で使用されている蛍光材料です。これらは長年にわたり広く使用されていますが、蛍光材料の品質管理は依然として大きな課題として残っています。
本コラムでは、蛍光の理論的背景、標準的な分光測色計が蛍光材料の品質管理に適さない理由、そして分光測色計と蛍光光度計を組み合わせた新しい測定手法がもたらす可能性、特に材料の耐光性を予測する上での有用性に関して説明いたします。

2. 蛍光の説明
2.1 蛍光とは
蛍光という名称は、蛍光鉱物の蛍石(フッ化カルシウムCaF2)に由来します。蛍光とは、原子や分子が特定の波長の光を吸収し、別の波長で光を放つ性質のことです。励起波長と放出波長の差はストークスシフトとして知られています。放出される蛍光は、通常、励起光に比べて長波長域の光スペクトルにシフトされます。
この効果は何に基づいているのでしょうか?この原理は図1にて説明されています。ほとんどの分子は室温で最も低いエネルギー状態、いわゆる基底状態(S₀)をとります。この基底状態の中には複数の振動準位が存在します。励起される前、多くの分子は最も低い振動準位をとります。
分子が特定の波長の光(青の矢印)を吸収すると、吸収された光子により分子はより高い振動エネルギー状態(S₁やS₂)をとります。続いて、分子は他の分子と衝突し、その結果、振動エネルギーを失って、励起状態の最も低い振動準位へ戻ります。その後、分子は基底状態(S₀)に戻ることが出来ます。
分子が基底状態に戻るとき、励起された波長とは異なる光子を放出します。これが、分子が蛍光を示す瞬間です(緑の矢印)。このような蛍光を示す事が出来る分子を蛍光体と呼びます。蛍光体内の電子の状態とその遷移は複雑ですが、ヤブロンスキー図(図1)を用いて視覚的に理解する事が出来ます。

(図1)
2.2 蛍光体の種類と産業用途
蛍光性をもつ分子や材料には、実にさまざまな形や大きさのものがあります。クロロフィルのように天然に存在する蛍光物質もあれば、安定した有機色素として特別に合成され、本来蛍光を発しない材料に添加される分子もあります。有機染料は、その大きさや構造に応じて、紫外線から近赤外線までの波長域で発光します。
一般的に、市販の蛍光染料は無機蛍光体、蛍光増白剤、昼光蛍光体の3つのグループに分けられます。
<無機蛍光体>
「蛍光」という名称は鉱物の蛍石(CaF₂)に由来していますが、後に観察された蛍光は蛍石そのものではなく、二価のユーロピウム(Eu²)の不純物によって生じていることが明らかになりました。ユーロピウムはランタン化物群に属する希土類の金属です。
ユーロピウムの蛍光は非常に大きなストークスシフトを持ち、さらに極めて高い耐光性があります。この特性から、紙幣や身分証明書などのセキュリティ関連製品で頻繁に使用され、ユーロ紙幣にも偽造防止のために利用されています。

<蛍光増白剤>
蛍光増白剤は、繊維、紙、プラスチック産業で最も頻繁に使用されている蛍光体のグループです。蛍光増白剤は、励起の最大波長が紫外線域(通常300〜400 nm)にあり、400〜480 nm、理想的には430〜450 nmの範囲で発光する物質です。
これにより、日光に含まれる目に見えない紫外線が、可視光の短波長側である青色域で再放出されます。追加の青色光の放出により、基材のわずかな黄色味が打ち消され、白色度が向上します。場合によっては、反射率が100%を超えることもあり、基材が「白よりも白い」ように見えることさえあります。
現在使用されている蛍光増白剤は6つのグループに分類されます。その中でもスチルベン化合物と呼ばれるグループが最大で、生産される蛍光増白剤の約80%を占めています。
<昼光蛍光体>
昼光蛍光体は、励起と放出の最大値がどちらも可視光領域にあるため、ほぼすべての光源で励起することができます。これらは、淡色の紙や塗料からプラスチック製品に至るまで、様々な分野で使われています。
これらは特定の波長で光の出力を増加させるため、非常に効果的であり、場合によっては反射だけでは得られないほどの高い光量を生み出すことが出来ます。そのため、反射、非蛍光成分、蛍光体の発光を組み合わせることで、見かけの反射率が100%を超える赤、黄、またはオレンジ色の材料を作り出すことが可能となります。

2.3 UV耐性と経年劣化挙動
蛍光成分を含む材料や塗料は、一般的に耐光性が低いと考えられています。塗料やコーティングの耐光性は、例えば顔料、樹脂、塗膜厚などによって影響を受けます。顔料濃度が高く膜厚が厚いほど耐光性は高くなりますが、その分蛍光効果が制限されてしまうため、どちらの要素にも限界があります。
特に昼光蛍光インキは、光、紫外線、熱に対して敏感です。紫外線によって蛍光インキが劣化すると蛍光が失われ、発光体が退色します。蛍光の減衰は、白色では黄ばみが起き、他の色合いでは暗さが増します。また、色を生み出す化学構造である発光体の減衰は、顔料自体の退色を進行させます。
次のコラムでは、一般的な分光測色計での蛍光測定について詳しく紹介いたします。

