光源ブースを活用した目視での色評価③(測定機器コラム)
3. 人工光源によるCIE標準光源の再現
3.1 光源と標準光源の定義
光源(Light Source)と標準光源(Illuminant)は混同されることがありますが、色評価の分野では明確に区別されています。
この違いについて「Billmeyer and Saltzman」では、次のように定義しています。
・光源:「物理的に実現可能な光であり、その分光分布を実験的に測定できるもの」
・標準光源;「相対分光分布によって定義された光であり、実際の光源として物理的に実現可能である場合もあれば、そうでない場合もあるもの」
つまり、光源は電球やLED、蛍光灯、太陽光のように実際に光を発している物理的な存在を指します。一方、標準光源は色評価や測色の基準として定義された理想的な光のモデルであり、必ずしも現実の光源として存在するとは限りません。
CIE(国際照明委員会)は、測色用途における基準スペクトルを提供するため、多数の分光分布(SPD)を定義しており、これらをCIE標準光源と呼びます。
3.2 CIE標準光源A
標準光源Aは、1931年にCIEによって定義され、白熱タングステンフィラメントランプの光を表しています。
その相対分光分布(SPD)は、約2,856Kのプランク放射体(黒体放射体)の分光特性に相当します。
光源ブースにおいて標準光源Aを再現する場合は、従来は白熱電球が使用されていましたが、現在では主に石英タングステンハロゲンランプ(色温度約3,000K)が使用されます(図3)。
3.3 CIE標準光源Fシリーズ
CIEは、F1からF12までの12種類の蛍光灯光源を定義しており、それらは3つのグループに分類されています。
これらの光源は、発光スペクトルのピーク波長や帯域幅が異なるため、演色評価数や色温度にも違いがあります。
| 分類 | ランプタイプ | 色温度(CT) | 演色評価数(Ra) |
| 標準タイプ | F1 – F6 | 2500 – 7000 K | 60 – 80 |
| 広帯域タイプ | F7 – F9 | 2500 – 7000 K | ˜ 80 |
| 三波長形タイプ | F10 – F12 | 2500 – 7000 K | 80 – 90 |
この12種類の中で、産業用途で最も広く使用されているのはF2とF11です。
- F2(CWF:Cool White Fluorescent)
- 色温度:約4,000K
- 演色評価数Ra:約60
- F11(TL84)
- 色温度:約4,000K
- 演色評価数Ra:85以上
光源ブースでFシリーズ標準光源を再現する場合には、市販の蛍光灯が使用されます(図4)。
3.4 CIE標準光源D65
1964年、CIEは実際の昼光を多数測定した結果に基づき、昼光標準光源シリーズを定義しました。
表に示される622件の測定結果から、330nmから700nmまでの昼光の理論的な分光分布曲線が構築されました。
CIE標準光源D65は、その中でも最も重要な昼光標準光源であり、色温度6,504Kの平均的な昼光を表しています。
これは、西ヨーロッパおよび北ヨーロッパの正午頃の自然光に相当し、直射日光と晴天時の天空光の両方を含みます。また、紫外線成分も含まれてる事が特徴です。
| 光源 | 色温度 | 呼称 |
| D50 | 5003 K | 日の出または日の入り時の暖かみのある昼光 |
| D55 | 5504 K | 午前中または午後の昼光 |
| D65 | 6504 K | 正午の昼光 |
| D75 | 7500 K | 曇天時の昼光 |

図3:byko-spectra proに搭載されたタングステンランプによる標準光源Aの再現

図4:byko-spectra proに搭載された蛍光灯による標準光源F2およびF11の再現
4. 光源ブースにおけるD65昼光の再現
市販の光源ブースや目視評価用照明装置では、昼光を再現するためにさまざまな種類の光源が使用されています。しかし、人工光源とCIE標準光源D65との一致度によって、同じサンプルであっても見え方が大きく異なる場合があります。
次の例では、あるサンプルペアを2種類の光源ブースで評価しています。
まず、光源ブース1では、色温度約6,500K、平均演色評価数(Ra)約96の蛍光灯を使用しています。この光源は、CIEが定義するD65を模したものですが、その再現精度はCIEメタメリズム指数(MIVIS)Class Bに相当します(詳細は2.4章参照)。
この評価条件下では、サンプルペア間の色差が非常に大きく見えます(図5)。
次に、光源ブース2である「byko-spectra pro」で同じサンプルペアを評価します。この装置では、特別に開発された青色フィルター付きハロゲンランプとLEDアレイを組み合わせた光源を採用しています。この独自の組み合わせにより、スペクトル上の不要なピーク(スパイク)のない優れたCIE D65シミュレーションが実現されます(図6の青色曲線参照)。その結果、CIE メタメリズム指数(MIVIS)において最高ランクの品質Class Aを達成しており、この条件下ではサンプルペアの差異は自然昼光下とほぼ同じとなり、色差もわずかにしか認識されません。

図5:蛍光灯による昼光シミュレーション

図6:byko-spectra proの特許取得済み照明システムによる昼光シミュレーション
5. まとめ:光源ブース「byko-spectra pro」が実現する最高クラスレベルの昼光環境
BYK-Gardnerの新しい光源ブース「byko-spectra pro」は、フィルター付きハロゲンランプとLEDアレイを組み合わせた独自の照明システムにより、実験室内で極めて自然な昼光環境を再現します。この革新的な光源技術により、CIEが定める標準光源D65を高精度にシミュレーションすることが可能となり、CIE基準で評価された最高ランクのClass A昼光シミュレーションを実現しています。
さらに、光源ブースに内蔵されたセンサーがランプ性能を常時監視し、ランプの状態に応じて電圧を自動調整し、安定した照明条件を維持します。また、本体ディスプレイには現在の色温度、照度、およびランプの累積使用時間が表示されるため、光源の状態を容易に管理することができます。
ランプ交換のタイミングを適切に把握できるだけでなく、メンテナンス頻度を抑えるために、Class A品質を維持できる昼光シミュレーションの寿命は600時間まで延長されています。
製品の使用環境によっては、さまざまな照明条件下で色一致が求められます。メタメリズムへの対応を考慮し、byko-spectra proでは以下の光源を搭載しています。
・D65(Class A) :高精度な昼光シミュレーション
・A光源 :白熱灯環境の再現
・CWF :クールホワイト蛍光灯
・TL84 :店舗照明などで広く使用される三波長型蛍光灯
・U30 :オフィスや商業施設を想定した蛍光灯
・UV光源 :蛍光材料や蛍光増白剤を含むサンプルの評価
単色製品の色評価においては拡散光が不可欠です。そのため、ディフューザーパネル(拡散パネル)が採用されており、光を均一に混合し検査エリア全体に均一な照明を提供します。
また、国際規格に準拠するため、光源ブース内部はマット仕上げの明るいグレー色で塗装されており、周囲環境が観察者に与える影響を最小限に抑えています。
光源ブースに求められるのは優れた技術性能だけではありません。操作性と作業効率も重要な要素です。
「byko-spectra pro」は、大型カラーディスプレイにより、光源の切り替えだけでなく、メニューガイドによる直感的な操作が可能です。また、付属のリモコンを使用することで、最大10m離れた位置からでも光源の切り替えが可能です。
さらに、オートシーケンスモードでは、あらかじめユーザーが設定した光源シーケンスに従って自動的に切り替えを行うため、ハンズフリーでの評価作業が可能です。
「byko-spectra pro」は、標準的な光源ブース仕様に加え、照明ユニット(ルミネア)仕様も用意されています。
照明ユニットタイプは、単体または複数台を組み合わせて天井吊り設置でき、自動車ボディなどのシステム部品や完成製品全体を評価するためのカラーハーモニールームの構築にも対応しています。また、これらの照明器具も光源ブースと同等のClass A照明性能を備えており、視覚的な色評価に必要な高精度を確保しています。

